めっきり空気が冷たくなりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、9月よりスタートした「発達障がいの子どものための支援者養成講座全4回」を担当いただいている山下先生から、当団体の機関紙に文章をお寄せいただきましたのでご紹介いたします。
コロナ禍における発達障がいのある子どもの心のケア
1 コロナ禍における子どもの心理的影響
2020年の初頭あたりから始まった新型コロナウィルス感染症の影響は、子どもたちの心にどのような影響を与えているのでしょうか?
コロナ禍では、子どもはたくさんの「喪失体験」をしていると考えられます。長期間の学校の休校、部活や習い事の大会・発表会の中止などにより、子どもは目標としていた「対象」を失ってしまいました。同時に、学校での役割や友人関係における心理的居場所など、集団の中での自分という存在のイメージを形成することが困難になり、孤独感を味わっていると考えられます。
2 発達障がいのある子どもへの心理的影響は?
緊急事態宣言が年に何度も発令される事態は子どもにとって大きな不安とストレスを与えます。発達障がいのある子どもは特に、言葉の理解や表現に困難を持つ場合が多いため、「情報を正確に理解することができない」「不安な気持ちを言葉で表現することが苦手」ということが生じます。彼らは言葉で不安やストレスを表現するのではなく、大人からすると「問題行動」によって表現します。例えば、自傷・他害行為、爪かみ、指しゃぶり、おもらしや夜尿、眠れない、夜中に目覚める、こだわりが強くなる、イライラが募るなどです。
3 発達障がいのある子どもへの心のケア
東京女子大学の前川あさ美さんによると、10年前の東日本大震災では、発達障がいのある子どもに必要だが不足していたものは、居場所、情報、物資、発達障がいへの理解の4つであると言います。東日本大震災時の経験から現在のコロナ禍における発達障がいのある子どもに対してできることを一つあげるとすると「心理的居場所を保障する」ことだと私は考えます。発達障がいのある子どもには、基本的生活の安定が最重要であり、それは、いついかなる時も「通常通りの学校」と「友人や先生を含めた学びの環境」が保障されることを意味します。
同時に1年半以上という長きにわたる緊急事態は子どもだけでなく大人の心も疲弊させます。親をはじめ教職員もいつの間にか心身ともに疲れきっていることもあります。私たち大人は周囲の力も頼りつつ、あきらめないけど頑張りすぎないように、しなやかにしぶとく生きることが大切なのかもしれません。
山下先生プロフィール
山下直樹
1971年、名古屋生まれ。
東京学芸大学障害児教育学科卒業後、渡欧。スイスにあるシュタイナー治療教育施設ゾンネンホーフ附属治療教育者養成ゼミナールにて学び、1998年修了。名古屋短期大学保育科教授、名古屋YWCA個別発達相談室「パティオ」担当。
著書に『もし、あなたが、その子だったら』(ほんの木刊)『「気になる子」のためのわらべうた』(クレヨンハウス)『「気になる子」のとらえ方と対応がわかる本~保育に活かす シュタイナー治療教育』(秀和システム)がある。
参考文献
前川あさ美 「東日本大震災における発達障害(児)者のニーズと 有効な支援のあり方に関する研究 ―岩手・宮城の発達障害の子どもたちと家族、支援者への調査から―」 厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業) 「障害者の防災対策とまちづくりに関する研究」 平成 24~26 年度 分担研究総合報告書(2014)
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冒頭でもお知らせした「発達障がいの子どものための支援者養成講座全4回」はオンラインで開講中です。来年度も開催予定(オンラインか会場かは未定)ですのでご興味のある方は来年度の講座案内を送付させていただきます。お気軽にお問合せくださいませ。
第1回 9/11(土)「子どもの行動をどう観るか」
・支援者の心構えと視点/アセスメントとは何か
・「気になる」から始まる理解と支援
・子どもの行動の意味を知る
第2回 10/23(土)「感覚から子どもの困難を理解する」1⇒1月に延期
・感覚統合や感覚の困難について
第3回 11/20(土)「感覚から子どもの困難を理解する」2
・アセスメントのための聴き方
第4回 12/4(土)「子どもとどう関わるか」
・ほめ上手、伝え上手になるヒント
・言葉によるコミュニケーションの困難を支援するには
◆対 象 子どもを支援している方、保護者
◆時 間 13:30〜16:45
13:30~15:00 山下先生による講義
15:15~16:45 ケースをもとにしたグループワーク
◆参加方法 zoomを使用したオンライン講演会
◆参 加 費 全4回 19, 900円(税込)